――ところで、釣りについては純粋な趣味ということだと思いますが、これが仕事に何かプラスの要素をもたらしている、というようなことはありますか?リフレッシュにはなるでしょうしあるいは忍耐を学んだとか?
J 忍耐ということに関して言えば俺はゴルフこそ忍耐のスポーツだろうと想像している。俺自身は、やればきっといかに自分が気が短いかってことを認識させられるに決まっているから一度もクラブを握っちゃいないけどね。
――それは正しいかもしれない。でも、デニス・ホッパーはゴルフが大好きですよ(笑)。
J 釣りに関して言えば、少なくとも今回のシリーズは俺にとって一つの装置のようなものとして機能している。人は釣りをしているときにはよりその人らしくなるというか、リラックスするわけだし、誰かと一緒にどこかへ釣りの旅に行くというのはシュチュエーションとしてもより冒険的になるしね。……だからこの企画にとって釣りというのはとても重要な要素なんだ。
――釣りをするという行為は、おそらく人間の歴史の中で――たとえばネアンデルタール人の頃から本能的に人間が求めるものだったんではないかと思います。
J それはその通りさ。でも、現代においては完全に変質している。人は食料を得るためでなく趣味で釣りをするようになったからね。でも本能と言うのは変わらないから、釣りをしていると人がどんな風に振る舞うかがあからさまになってくる。そこが面白いし、この企画のポイントでもある。それと、もうひとつ付け加えるならば人は釣りとかに熱中し始めると15分もするとキャメラの存在を忘れてくれるんだよ。だからありのままの姿が映し出されることになる。
――6つのエピソードを通して観ると、最初の頃のジムやトムとの回よりも後半の方がより凝った作りになっている感じを受けました。
J うん。ジムとの回はパイロット版だったんだが鮫釣りっていうのはエキサイティングだった。で、一年を経てトムとのジャマイカ行きを手始めに回を重ねることになったんだが、まあ釣り自体は普通の釣りになるから、目的地をより冒険的にしたり演出をより娯楽的にしたという部分はあると思う。……あと、ゲストのパーソナリティにもよるかな。マットはとてもシャイな奴なんで設定の方でマジシャンを登場させることでお膳立てをしたりね。
――あとウィレムとのアイス・フィッシングの回などはほとんど物語風でした。
J そして二人は死んだ、っていう部分かい?
――ええ。
J あれは実は俺の友人たちの間では賛否両論で、ふざけすぎだって言う奴もいるんだが君はどう思った?
――僕は好きですよ。その次のデニスの回でナレーションでフォローしている点も含めて。
J 俺自身としても一番気に入っている部分だ。
――ああいったアイデアというのは、世の中につまらない釣り番組が多すぎるからそれを茶化してやろうと言った気持ちがあったとか?
J 少なくとも、スタート時点ではいつもやりたくないことをいろいろとさせようとするジムに対して報復してやろうとは思ってたよ(笑)。
――なるほど。
(つづく)
……ジョン・ルーリーのインタビューはまだ続きます。次回はジョンの一緒に釣りをしてみたい夢のゲストについて。懐かしい名前が出てきますが、その辺はご愛嬌(このインタビューは1998年に収録されたものです)。